電報 サービスのこんな進化
デザイナーがものを作っているというのは大袈裟だけど、Sにはデザイナーの意見を尊重する土壌は確かにあると、Gはあらためて思ったものだ。
Oは述懐する。
「キヤディの件ではK君に負けましたが、コントローラーの件では、私の意見を通してもらいました。
あるとき、ゲーム専門誌に、プレイステーションの成功の要因は両手でつかむコントローラーにありという記事が出ていたので、私は大笑いして、彼に可そら見てみろ。
ここに書いてあるじゃないか』といいました。
すると、K君は『いや、Oさん、あれだけは僕の負けです。
でもあとは全部僕の勝ちです』と、涼しい顔をしていました。
それが、彼の実にいいところなんですね」。
プレイステーション機の中に、勝つめのノウハウを満載した。
ユーザーにとっては使いやすい操作性と、飽きのこないデ、ザインを提供した。
その回路の中身は知恵の固まりであった。
システムGを数チップに入れ、メーカーとして作りやすきを徹底的に追求した。
世代を経るごとに、目に見えて部口聞を減らして行ける構造を仕込み、大胆に値引きを敢行。
その結果、ライバルをノックアウトし、販売台数の飛躍、ユーザー層の拡大が実現されたのである。
合弁を巡るSとSミュージックの対立。
SにとってSCEIは、ゲーム市場に乗り出すための戦略組織である。
ではSとSミュージックが五〇パーセントずつ出資した会社であるSCEIにとって、Sとはどんな存在なのか。
一方Sは、どんな思いでSCEIの設立に踏み切ったのか。
「私は経営責任者として最大の支援者でありたかった」というOだが、しかし四六時中、この仕事に関わり合っていくわけにはいかない。
そこで「伊庭君に細かくマネジメントしてもらった」。
現在、Sの最高財務責任者の副社長の伊庭保(当時・S専務)である。
「当時は、伊庭君とK君が議論してよくぶつかっては、Kは俺に直訴しに来ていたな」。
実務を担当した伊庭は、こう言う。
「Oさんはプレイステーションはベンチャービジネスの成功例とあちこちで言われているようですが、私はそうは思いません。
あくまでもSのベンチャーですよ。
Sの人材、資金、製造ファシリテイなどをフルに活用できたという意味でほかのベンチャービジネスとは、立場が異なると思いますね」。
伊庭は一九九二年夏にS生命からSに復帰し、経営戦略部を担当することとなった。
仕事の一つに新規事業の検討があった。
Kもしょっちゅう、そこに出入りしていた。
「彼は夢みたいなことを吹聴し、説得に歩いていたね。
でも私はプレイステーションがこれはどのものになるとは、まったく想像もしていなかった。
正直言って、この事業はやってみないと分からないと思った。
場合によっては、畳まなければならなくなることも覚悟していました」。
しかし、そんなリスクでも負ってみょうかと思わせる説得力がKの言葉にはあった。
「ひらめきだなあ。
一種独特の。
なんというか…、そうだ夢だね。
しかも夢だけじゃない。
実現する可能性があるんじゃないかと思わせる説得力があった。
だから、こいつが言うなら、大いにバックアップしようと思ったのです。
鼻っぱしらが強く、これほどの自信家もSには、そうはいない。
彼が強いのは目標の設定がうまいこと。
すごく高い目標を掲げるが、それは思いつきではなく、ものすごい勉強に裏打ちされている。
会うたびにどんどん勉強して進歩している。
半導体のプロセスや、設計ルールの進歩の度合いという確かな見通しの上に、高い目標をおくんです。
だから、説得力があるんです」(伊庭)。
九二年~九四年当時のSは営業収支が赤字に転落するなど苦しい時期だった。
全社的に投資も抑制され、アクティブな活動は控えられた。
社内の雰囲気も暗い。
しかし、Kたちには、思う存分やらせようというのが、伊庭の方針だった。
「そんな時代だからこそ、明るく楽しいこともあってもいいじゃないかと思ったんです」。
伊庭が進めたのは、合弁会社構想だった。
Sの中でゲ-ム事業を手がけるという考えもあった「ゲームビジネスではハ-ドとソフトは不可分ですからねえ。
両者は一緒にやるべきだと思った」。
そこで、Sミュージックに話を持って行ったが、意外にもYの反応は「合弁したくありません」。
伊庭にしてみればYは、エピック・Sのゲ-ム制作のリーダーであり、Kの親分格に当たる。
だから、Sとの合弁会社設立計画については、喜んでOKしてくれると読んでいたのだが、現実には「ノ-」。
Yが拒否したのは、Sミュージックの立場からであった。
「このビジネスはSミュージックにとって極めてリスクの大きいものです。
なるべく主体はソニ欲しい」と、伊庭に言った。
SとSミュージックは世間が見るほど一体の関係にはない。
S側では、Sミュージックは子会社の一つと見るが、Sミュージック側に、Sの力を借りずに、ここまでの地位を築いたという誇りがある。
だから、親会社の言うことだから受け入れなければならないという社風はない。
Yが想定したのはソフトにドメインを決めて、関わることだ。
プラットフォームの運営も含めてゲ-ムビジネスのメインは、S本体に残すという構造を希望した。
しかし、伊庭は一歩も譲らない。
「レコードとゲ-ムとはビジネス構造が違うんだ。
レコードはデファクト・スタンダードであり、オープン・フォーマットだ。
だから、ハードとソフト、が別々に展開しても成り立つ。
しかし、ゲ-ムはそれぞれのプラットフォームでクローズなフォーマットなのだから、別々に行う必然性がない。
だから一緒にやろう」。
こう言ったことに対する伊庭の解説。
「SもSミュージックもどちらも上場会社だから、一緒にやるとなったら、Sの社内で行うのは・無理で、形としては合弁の方法しかありません。
それにKもS社内のか官僚主義は事業を進める上で障害となると、よく言っていましたから」。
Yは、この伊庭のコメントに対して、こう言う。
「これは伊庭さんの独特のレトリックですね。
3DOが失敗しても松下は余り傷も負わないが、当時のSミュージックにしてみると、軽い傷というわけにはいかない。
だから、なるべく避けていたかったというのが本音でした。
第三者からの持ち込みのアイデアだったら、絶対にやらなかったでしょう」。
ところが、伊庭は無理矢理、Sミュージックを引きずり込み、合弁形の実現に至る。
「最終的には、そうなってしまった。
私はここまで、深く関わるとは、夢にも思っていませんでした。
だってあまりにリスクが大きいからです」(Y)。
Sミュージックでの心配は、Yだけではなかった。
Sミュージックの経営企画室でもゲームビジネスが湯水の如く金を使い、Sミュージックが上場したときに得たプレミアムを使い果たしてしまうのではないかと憂慮していた。
しかし、合弁が決まったからには、Sミュージックとしても知らん振りはできない。
リスクを抱えた以上、一歩、後に引くという姿勢は許されなくなった「こうなったからには真剣にやら、ざるを得ない」(Y)。
それも部分的な関わりではなく、Oは言う。
「五O対五Oの資本構成も成功の理由でしょう。
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